認知行動療法とは?治療の方法とカウンセリング技法

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認知行動療法とは(Cognitive Behavior Therapy)

認知行動療法(CBT)とは、学習理論に基づく行動療法的な技法アーロン・ベックの認知療法やアルバート・エリス論理療法を基にする認知的アプローチを用いて系統的に問題行動や症状を改善する科学的な治療法です。また、その治療パッケージの総称として「認知行動療法(CBT)」と言います。

認知行動療法の治療では、問題や症状をクライエント自身がセルフケアできるようになることを目指し、治療者とクライエントが問題を共有し、お互いに共同で治療的な目標設定をおこない問題を解決していきます。他の心理療法と比べ認知行動療法の治療は短期間でおこなわれる特徴があります。

cbt

認知行動療法の特徴

特徴
  • 治療効果が測定可能
  • 健康保険の適用対象
  • 意識的な行動と認知を扱う
  • 社会的に評価が高い
  • 治療はクライエントとの共同作業
  • セルフケア(自己コントロール)の重視

認知行動療法の一番の特徴はエビデンス(科学的根拠)に基づく治療法であるということです。つまり、治療効果が測定できる唯一の心理療法という事です。

精神分析をはじめとする多くの心理療法は「因果関係の証明はできないが、こうしてみたら症状が良くなった」といったように「臨床」がベースになっているため、効果を証明する仕組みを持っていません。

ただ、誤解されやすことですが、治療効果が証明されているからといって、数ある心理療法の中で認知行動療法が一番イイという訳ではないので注意が必要です。

結果を測定する仕組みがある認知行動療法は保険点数などの観点からすると、現代社会ではとても有利です。しかし、「こころ」を完全に測定することはできないので、見えないことを取り扱う治療法が「結果としてうまくいく」、という事は十分に考えられます。

【認知行動療法が効果的な症状】

うつ病(気分障害)/各種の恐怖症/摂食障害/パニック障害/強迫性障害/不安障害/アルコール依存/統合失調症/自律神経失調症etc

保険制度

2010年4月より「認知療法・認知行動療法」に診療報酬が設定され、健康保険が適用されるようになりました。心理療法で健康保険が適用される唯一の治療法です。

一連の治療は16回まで

※2016年度診療報酬改定で、看護師もCBT実施の権限が付与される

背景にあるのは、うつ病患者の増加です。認知療法(認知行動療法)は、精神療法が進んでいるアメリカやイギリスで正式に治療効果が認められているため、日本でもその効果が期待されています。

認知行動療法に関連する学会や資格

●日本認知・行動療法学会 http://jabt.umin.ne.jp/

→資格:認定行動療法士/専門行動療法士

●日本認知療法学会 http://jact.umin.jp/

●日本認知行動カウンセリング協会 http://jacbc.org/

→認知行動療法専門カウンセラー/認知行動療法実践看護師

【余談】認知療法と行動療法と「認知行動療法」の関係

CBT関連の書籍を何冊か読んでみると気づきますが、「認知行動療法」と同じタイトルが書かれていても「認知療法」について書かれた本と「行動療法」について書かれた本とに内容が二分しています。

CBTの勉強を始めると混乱する人もいるので、その理由を簡単に解説します。

認知行動療法という名称から認知療法と行動療法が合わさった理論だと思われがちですが、歴史からみると認知行動療法はアーロン・ベックの認知療法を指します。構造としては前述した通り、認知療法と論理療法の認知的考えと行動療法の技法が統合された理論です。

その理論の統合が問題になるところで、認知の歪みに介入する「認知療法」と、三項随伴を主体とした「行動療法」では問題に対するアセスメント(考え方)がまったく違うので基本的には一つにまとまりません。

主に行動療法家が、保険制度など社会の流れに合わせて「認知」という単語を行動の中に含めて使うようになったのですが、認知療法の専門家は認知療法をCBTのタイトルで執筆し、行動療法の専門家は行動療法をCBTのタイトルで執筆するので、内容が二分しています。

そうなると、治療者によって一貫性がないのではないか?と疑問になるところですが、医療機関でおこなわれるCBTは厚生労働省のマニュアルを遵守しているので基本的な治療法に違いはないです。

また、この先で紹介しますが、別々の理論に基づくCBTではなく、新しい考えを取り入れより統合された新世代のCBTも誕生しています。

認知行動療法の治療の流れ

カウンセリング

全体の構造

・10~20セッションの短期的な治療

※保険診療は16セッション

・およそ週一回ペースで開始し徐々に間隔を広げる

1セッションの内容
  1. ホームワークの確認(2回目以降)と目標設定
  2. アジェンダ(取り扱う議題)の設定
  3. アジェンダを基に話し合う
  4. ホームワークを決める
  5. ふりかえり

※認知行動療法では、基本的なセッションの構造が決められており、毎回決まった流れでおこなわれます。

※アジェンダとは

クライエントとカウンセラーが希望を出し合い、その日のセッションで何を話すかを決めること。クライエントは話したいこと、習得したいスキルなどを提示し、カウンセラーも同じように議題の希望を出します。お互いに協力し合いその日におこなう内容を設定して進められます。

治療計画(うつモデル)

初期:アセスメントと心理教育
  • クライエントとの関係づくり
  • アセスメント
  • 認知行動療法の考え方や構造を説明
  • 症状についての心理教育
中期:ホームワーク
  • CBT技法の導入|認知再構成法など
  • ホームワーク中心で進行
  • セルフモニタリング
  • 自動思考を取り扱う
後期:般化と再発防止
  • 治療効果の確認と強化
  • 現実生活への般化
  • 再発防止について話し合う

修了後:フォローアップ


認知行動療法の基本的な治療の構造や各セッションでおこなう内容はなんとなく分かりましたか?今回はうつの治療計画を紹介しましたが、他の問題を扱う場合もほぼ同じ流れで進めます。次に認知行動療法で用いられる治療技法を紹介します。

認知行動療法の技法

認知行動療法で実施される治療技法の紹介です。

認知再構成法(非機能的思考記録表・コラム法)

認知行動療法イコール認知再構成法と誤解されるほど中核をなしている技法です。自動思考にアプローチする方法として考案され、保険診療で利用されています。「コラム法」「非機能的思考記録表」とも呼ばれます。主にうつ病の治療に用います。

詳しくはこちら認知再構成法とは

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

ソーシャルスキルトレーニングは、引きこもりや軽度の発達障害統合失調症者を対象に、生活の質の向上、社会適応を目的とした技法で社会生活技能訓練とも呼ばれます。主に発達段階の子供に用いられます。

詳しくはこちらソーシャルスキルトレーニングとは

不安階層表

不安階層表は、主に強迫性障害恐怖症に用いられ、暴露法(エクスポージャー法)に含まれる方法です。不安や恐怖を感じる場面を具体的に挙げて、不安の強度(SUD)の低いことろから実験的に体験していきます。

詳しくはこちら不安階層表とは(系統的脱感作)

行動活性化法

行動活性化法は、活動スケジュール表を用いてポジティブな出来事を抽出し増加させる方法です。主にうつ病の治療に用いられ、抑うつによって妨害または回避しているポジティブな行動を増やすことが目的です。

詳しくはこちら行動活性化法とは


うつ症状に適した技法や恐怖症に効果を発揮する技法など、治療技法にはそれぞれ特徴があるので状況や問題に考慮して用いられます。そして、近年、新しい認知行動療法、第三世代の認知行動療法と呼ばれる分野が注目されています。マインドフルネスという仏教の禅の精神を認知行動療法に組み込んだ治療法です。次に、この第三世代の認知行動療法を紹介します。

第三世代の認知行動療法

癒し

第三世代とは

認知行動療法の第三世代とは、行動療法からの流れを第一世代、認知療法からの流れを第二世代として、新たに「文脈」「機能」に注目して発展した認知行動療法のことを第三世代と呼ばれるようになりました。

行動的・認知的な技法に加え、文脈的で体験的な変化に期待する援助技法を用いる。

第一世代:1950年代~

「行動療法」から発展した認知行動療法。

不安階層表ソーシャルスキルトレーニング(SST)など

第二世代:1970年代~

「認知療法」から発展した認知行動療法

認知再構成法など

第三世代:2000年頃~

認知行動療法の新しい流れ「第三世代」

第三世代の主な援助技法

第三世代の認知行動療法を代表する主な技法です。

マインドフルネス認知療法(MBCT)

マインドフルネス認知療法は、再発性のうつ病を治療するためにマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)を最適化した援助技法。うつ病の再発防止に高い効果が期待できる療法です。

詳しくはこちらマインドフルネス認知療法(MBCT)

弁証法的行動療法(DBT)

弁証法的行動療法は、能力開発やモチベーションの強化を目的に「感情の調節」「対人関係」「マインドフルネス」などのスキルトレーニングを含む治療法です。治療が困難とされてきた境界性パーソナリティ障害の治療に用いられます。

詳しくはこちら弁証法的行動療法(DBT)

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)

アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、行動療法的手法にマインドフルネスを取り入れたセラピー。

心理的に柔軟性をもって「今、この瞬間」を価値判断せず受け入れる(アクセプタンス)。自身が選んだ価値に対しての行動を維持、または変化させるプロセス(コミットメント)がセラピーの主軸です。

詳しくはこちらアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)

脱フュージョン

脱フュージョンは、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)で用いられる援助技法です。認知的脱フュージョンとも呼ばれ、認知的フュージョンと呼ばれる好ましくない出来事とセルフイメージの結びつきから思考(文脈)に距離をもたせる方法です。

詳しくはこちら脱フュージョン


認知行動療法の概要と治療的なセッションについてお伝えし、代表的な援助技法や認知行動療法の新しい展開までをかいつまんで紹介させていただきました。認知行動療法とはなにか?ということが、なんとなくでも伝わりましたでしょうか。

認知行動療法以外の心理療法の理論も概要を紹介していますので、ぜひお目を通してみてください。

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