交流分析とは?エゴグラムから人生脚本まで分かりやすく解説

交流分析の紹介ページです。交流分析の概要と基本的な考え方から、代表する理論として「構造分析」「交流パターンの分析」「ゲーム分析」「脚本分析」を解説しています。

また、エゴグラムやラケット感情、時間の構造化にも触れていますので、一通り目を通していただくことで交流分析についての基礎学習や理解を深める役に立つことができればと思います。

スポンサーリンク

交流分析とは|TA:Transactional Analysis

交流分析

交流分析とは

1950年代後半にアメリカの精神分析医エリック・バーン(Eric Berne)によって提唱された心理学理論とそれに基づく心理療法です。正式名Transactional Analysisiを略してTAと表記されます。

交流分析は、心理療法の源流として知られる精神分析の口語版として評価されており、心理学、カウンセリングの教科書や心理系民間資格の学習プログラムには必ずと言うくらい組み込まれているので、心理学を学び始めたばかりの人でも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

また、非常に実践向けな理論としても評価が高く精神療法心理カウンセリングで用いられるだけではなく、学校教育や企業の社員研修などでもコミュニケーションスキルの教育として交流分析を取り入れているところも多くあります。

なお、交流分析に特化した民間資格として、日本交流分析学会が認定する「交流分析士」という資格があります。・日本交流分析学会:http://www.js-ta.jp/

構造分析

ここからは、交流分析の理論の紹介です。

1つ目の理論は、エゴグラムで知られる「構造分析」です。構造分析は、個人の性格傾向を測定し、その傾向を分析することで問題に対処する方法ですが、性格傾向の分析に必要な「自我状態」という概念について先に説明します。

自我状態とは

自我状態は「思考・感情・経験によっておこる一連の行動パターンが統合されたシステム」と定義されています。

簡単に表現すると、「人間の中にはそれぞれ特徴的な性格をした3人が住んでいて、その3人のパワーバランスが人の性格を形作っている」という考えのことです。この3人のパワーバランスを自我状態と言います

3つの自我状態(3人の私)

親の自我状態

Parentの頭文字をとって「P」で表記される「親の自我状態」は、育ててくれた人の影響を受けて取り入れた考え方や行動。親の自我「P」は、父性的な自我である「CP」と母性的な自我の「NP」があります。

CP(父性):批判・道徳「~すべきだ」「それは当然だ」

NP(母性):優しさ・保護「~してあげる」「私に任せて」

大人の自我状態

Adultの頭文字をとって「A」で表記される「大人の自我状態」は、知識や経験に基づいて冷静な判断をする自我状態で、データを処理するように思考するコンピューターのような部分です。Aが高い人は、冷たい人と思われやすい傾向があります。

A(大人):知識・経験・冷静

子供の自我状態

Childの頭文字をとって「C」で表現される「子供の自我状態」は、子供のころの感覚を残している部分で本能的な行動が特徴です。子供の自我「C」は、自由な子供の「FC」と順応な子供の「AC」があります。

FC(自由):自己表現する。わがままな子「ワーキャー」「欲しい」「嫌い」

AC(順応):自分を抑える。ひかえめな子「我慢強い」「自信がない」

自我状態

構造分析の方法

構造分析は、その人の性格傾向を表現しているP・A・Cの自我状態を使って自分自身を分析する方法です。

P・A・Cのバランスや強弱を観察すると、自分の性格傾向が客観的に分かるので、その性格が基になって起こりうる問題を知り、問題が起こる前に対処方法を考えることができます。

  • P主導:Pが中心だと、強迫的であったり心配性、胃潰瘍やうつの心配
  • A主導:仕事はできるが、抑圧された感情から突然トラブルを起こす
  • C主導:子供っぽい。他者や物質に依存しやすい

3つの自我状態から主導権を握っている自我が分かると、およその性格傾向が見えてきます。自我状態の測定には「エゴグラム」を使います。

自我状態を測定する

P・A・C、3つの自我状態のエネルギー量を測定しグラフ化したものを「エゴグラム」と言います。日本では「東大式エゴグラム」が有名で、東大式エゴグラムは53問の質問に答えることで自我状態をグラフ化することができます。

teg

東大式エゴグラムは販売されていますが、個人販売は見受けないので試してみたい方は簡易版を作成して公開しているサイトやスマートフォン用のアプリなどがありますので、正式なものではないですが、参考に試してみるといいかもしれません。

エゴグラムの典型的な例

下に表示しているのがエゴグラムの典型的なパターンです。東大式エゴグラムで言えば53の質問に回答することでこのようなグラフが出来上がります。

このグラフからは、「Aが低いので感情に流されやすく冷静な判断に欠ける」とか「全体的に低い位置を示しているので元気がない」といったことが観察できます。

また、グラフの型を見ることで全体的な性格が見えてきます。例えば例に示した上段のM型山型「自他肯定」のパターンで理想的と言われます。

反対に3段目のW型V型「自他否定」のパターンで、抑うつや情緒不安定により日常生活に問題が起こりやすい状態と言われています。

エゴグラム

エゴグラムで測定しているのは「今ここ」での性格傾向なので、一年後には変わっている可能性があります

また、「FCの低い人が意識的にわがままに振る舞うことで、FCを上げていく」というように、自我状態は自らの行動によって少しずつ変えていくことができる性質があります。

この性質を利用して好ましくない自我状態を好ましい状態へ変えていくことが構造分析の目的です。

交流パターンの分析

続いて交流分析の2つ目の理論は「交流パターンの分析」です。

交流パターンの分析は、自分と相手との日常の会話・やりとりのパターンを知って分析することによって、「かかわり」を変化させる方法です。人の会話ややりとりのパターンには自我状態が大きく影響しているのですが、このパターンを理解することで意識的にかかわりをコントロールできるようになります。

典型的な交流のパターンには「相補的交流」「交差的交流」「裏面的交流」の3つがありますので、それぞれを解説します。

相補的交流

お互いに求めている反応が素直に返ってくる交流です。相補的に交流している限り、かかわりの中で問題が起こることはありません。図のように、お互いの自我状態を矢印が並行に行き交うことが特徴です。

相補的交流

例:(A)⇔(A)の相補的な交流

部下「本日の会議は14時から開始予定でよろしいですか?」

上司「来客があるので15時からへ変更をお願いします。」

例:(P)⇔(C)の相補的な交流

部下「あーっ、どうやっても計算が合わない!」

上司「どうした?そこは、こうすればうまく合うね。大丈夫!」

交叉的交流

求めている反応とは別の反応が返ってくる交流のパターン。期待している反応が噛み合わないので、話が途切れるか、ケンカになりやすい。お互いの自我状態を矢印が交叉していたり別々の方向に向かうことが特徴です。

交叉的交流

例:(A)→(A)・(P)→(A)

社員A「Bさん、E社の担当が本日お会いしたいそうです。」

社員B「この状況で対応している余裕があると思うか?」

例:(P)→(C)・(P)→(C)

社員A「こっちの案件を先に片づけなきゃダメだろ!」

社員B「それはあなたの仕事でしょ!」

裏面的交流

裏がある交流のパターン。言葉の裏に別の意図があったり、感情を隠して演じるようなかかわりが見られる。複数の自我に向けて矢印が行き交う複雑な構図になることが特徴です。

裏面交流

例:表では(C)⇔(C)、裏では(A)→(C)

表:C⇔C

部下「いや~、さすが部長。驚きです!」

部長「どうだ、凄いだろっハハハ!」

裏:A→C

部下「ただのまぐれで浮かれやがって」

交流パターンの分析では、同じパターンで何度も繰り返される「交差的交流」と「裏面的交流」を相補的な交流になるよう働きかけることで、スムーズなコミュニケーションへ修正していきます。交流パターンは自らが気づいて意識的に変えていくことが必要になります。

ゲーム分析

3つ目の理論は「ゲーム分析」です。「ゲーム」と言うと楽しい遊びを想像しますが、交流分析での「ゲーム」とは、いわゆる「心理ゲーム」のことです。

それも破滅的で不快な結末に終わるようなやりとりのことで、そのやりとりがパターン化して繰り返される行為を「ゲーム」と定義しています。

交流パターンの分析で紹介した「裏面的交流」が、ある特定のきっかけによって何度も繰り返されるという特徴があり、相手を怒らせたり、悲しませたりすることで歪んだ※ストロークを得ようとするところから始まります。

関連ストロークとは

ゲームの例

息子「肉がない!こんなもの食べられるか!」

母親「だったら食べるな!作ったものに文句をつけるな、出て行け!」

・・「なにを!!」「ドシャン、ガシャン、バタン」。。

思春期の子を持つ親子にありがちなゲームの例です。小さなきっかけでこの状況が毎度のように繰り返されます。

実は息子はお肉が食べたくて怒っている訳ではないのです。不本意ながらも初めから怒鳴られることを目的にゲームを仕掛けていて、母親も結果が分かっていながらゲームに乗っています。

母親も息子もゲームを始めた瞬間に不快な結果に終わることが分かっていますが、止めることができなくなっています。

ゲームをする理由

なぜ、破滅的で不快な結果にしかならないと分かっているゲームを繰り返してしまうのでしょうか?その理由は主に3つあります。

  1. ストローク(注目や愛情)を得たい為の誤った手段
  2. ラケット感情を感じるため
  3. 暇つぶし

関連ラケット感情とは

ゲームの公式

ゲームには決まった流れがあり、公式として表すと以下の通りです。

ゲームの公式

公式のアルファベットは「Con」「Gimmick」「Responese」「Switch」「Cross-Up」「Payoff」の略です。

ゲームが起こらないかかわり

ゲームは、エゴグラムで言う「自他肯定」の自我状態では起こりません。また、A「大人の自我状態」の値が高く、Aが優位なエゴグラムを持つ人もゲームを演じることがないと言われています。

ゲームを仕掛ける人も受ける人も冷静な状況判断が困難な状況に陥っていますので、まずは冷静になることを心がけることが大切です。

ゲームを理解して分析できるようになれば、ゲームが始まっても乗らない選択ができるようになったり、歪みのないかかわりを築くことができます。これが「ゲーム分析」です。

時間の構造化

「ストローク」や「ゲーム」の説明をしたところで、1つ交流分析の技法の紹介です。

この技法は、「時間の構造化」と言って日々の生活の中でどれくらいのストロークを得ているのかを測定し、不足しているストロークを補う目的でおこなわれます。

ストロークが慢性的に不足すると、抑うつや神経症につながることも多く、時間の構造化によってストローク不足だと分かれば、必要なストロークを得られるようにする治療的な技法です。

詳しくはこちら時間の構造化とは

脚本分析(人生脚本)

波乱万丈な生涯を「ドラマのような人生」などと表現することがありますが、交流分析では、まさに人生をドラマだと仮定しています。この人生のドラマには脚本があり、人は脚本通りに一生を演じているというのです。

進学・就職・結婚・病気と人生の大きな局面でいつも失敗する人は、はじめから失敗する脚本を手にしています。なんでも上手くいく人はそんな脚本を書いたのでしょう。

人生脚本は6才くらいまでには書き終えているとされ、両親の影響を受けて幼少期に完成させています。完成してしまった脚本が好ましくない脚本であったなら、この拘束を外し、不適切な脚本を好ましい脚本へ書きかえて、人生の可能性を最大限活かそうとするのが脚本分析であり、交流分析の最大の目的です

悲劇的な脚本

おもに幼児期に親から受けた「禁止令」を元に書かれた脚本。この悲劇的な脚本に従うと、過食による肥満や拒食、自らの行動が起因する病気、計画犯罪・性犯罪・物質依存・アルコール中毒・事故死・自殺など、自分で自分を不幸にします。

悲劇的な脚本のなかは「成功の後には必ず大きな失敗をする」とか「健康であってはいけない」とか、極端な場合は「生きていてはいけない」などと書かれています。これが親から受け取った「禁止令」といわれるもので次に紹介します。

成功者の脚本

絵に描いたような成功者のイメージです。この脚本を持っている人は、人生の満足度が高く。失敗は成功のもとになり、何事も一生懸命で、他人からは輝いて見えます。自他ともに尊重し、周りにいる人を幸せにします。

脚本分析が目標とするのは「成功者の脚本」です。誰もが理想とする脚本を持つことは難しいですが、脚本から禁止令を消して、悲劇が待つ人生から成功者に近づけていくことはできるのです。

禁止令

「脚本のもとになる危険な材料」

禁止令の一覧

健康であってはいけない

普段かまってくれない親が病気の時だけ優しくしてくれる経験が多いと「病気のときは愛された、健康であってはいけない」と健康であることを禁止される。また、自身の体調を管理できず病気を繰り返している親をモデルにした場合もこの禁止令が伝わる可能性がある。

この禁止令を持つ人は、健康に関心がないか、あるように振る舞うが行動が伴わない。暴飲暴食、偏食、不眠、過度な喫煙、症状としては胃潰瘍などを繰り返すことが多く、注目や愛情のストロークがほしいために病気を使って必要以上に人を巻き込む傾向があります。

考えてはいけない

「口答えするな」「お前は黙って従いなさい」「私たちに任せなさい、あなたは何も考える必要はありません」と考えを否定されたり、親に従うかたちで幼児期を過ごすと受けやすい禁止令です。

この禁止令を持つ人は、何事も受け身で自ら考えることを放棄しているようにみえます。自発性が乏しいため引きこもったり、何をすればいいか分からずパニックを起こすといった問題をもつ可能性が高いです。

成功してはいけない

「お前には無理だ」「お前は何をやってもだダメだ」と子供の努力を認めない親、失敗したときにだけ励ます親、失敗を繰り返す親から伝わるのがこの禁止令です。

この禁止令を持つ人は、はじめから何かをなすことに関心がないか、やる気も能力もありながら入試テストの解答用紙に名前を書き忘れたり、昇進直後に不祥事を起こしたりと信じられないミスをする傾向があります。

女であってはいけない

同じ女性である母親が「男に生まれたかった」「女ばかりが損をする」といった態度をとっていたり、「男の子が欲しかった」という親のメッセージを受けた子供は「女のわたしは必要ではない」「私は男の子でなければいけなかった」と女であることを禁止されてしまいます。

この禁止令を持つ人は、自分に自身を持つことができません。男のように振る舞うことが多く、嫉妬から男性と敵対したり、女性に対する嫌悪感から女性とも適切な関係をつくれないなどといった問題を抱えることになります。

存在してはいけない

生命を脅かす危険な禁止令。幼児期の虐待や育児放棄から自身の存在を否定されたり、過労による病死や自殺をした親をモデルにすると存在の禁止令を受ける。

この禁止令を持つ人は、なにごとにも希望が持てず絶望感にさいなまれています。過度な不眠飲酒スピードの出し過ぎや危険な場所を好むといった傾向があります。

そのほかにも様々な禁止令があります。

  • 男であってはいけない
  • 子供でいてはいけない
  • 感じてはいけない
  • 楽しんではいけない
  • 成長してはいけない
  • 実行してはいけない
  • 目立ってはいけない
  • 仲間に入ってはいけない
  • 愛してはいけない
  • 自立してはいけない
  • 近づいてはいけない
  • 欲しがってはいけない

6歳までに書き終えた人生脚本を書きかえるには、まずは自分の中の「禁止令」を見つけることです。禁止令に気づけただけでも脚本は大きく変わってきます。強い禁止令を消すことは難しいですが、意識的な行動で少しずつ脚本を書きかえていきます。

交流分析の概要説明はここまでです。かいつまんだ説明でしたが、4つの分析の概要はお分かりいただけましたでしょうか?ストロークや時間の構造化についても交流分析の重要な概念なのでお目を通していただければと思います。閲覧いただきありがとうございました。

modoru
スポンサーリンク