自己理論とは|パーソンセンタードアプローチ

自己理論:用語解説

スポンサーリンク

自己理論

自己理論は、ロジャーズの主要理論のひとつ。自己概念(自己構造)と体験の一致・不一致によってパーソナリティや心理的不適応のメカニズム、治療の目標である「十分に機能する人間」を説明しています。

●自己概念

「自分は臆病者だ」「俺は短気でキレやすい」「私はカワイイ」

自分が自分にどんなイメージをもっているか、また自分で自分をどう評価しているかといった自己に対するイメージを「自己概念」と呼びます。来談者中心療法では、自己概念が人間の行動を規定し、自己概念が変わることで自ずと行動も変化すると考えます。

例:「婚活女性」

客観的に容姿に恵まれた女性が、願望はあるのに結婚できない、それどころか彼氏もろくにつくれない。こうした女性は、「私に合う男性が居ない」「私には魅力がない」「男性と親密になれない」といったネガティブな自己概念を持っていることが多い。

逆に、ルックスが恵まれているとは言えない女性でも人並み以上に男性と交際し、理想の結婚をする女性もいます。そんな人は「私は男性を幸せにできる」「私には魅力がある」「私は男性に好かれる」といったポジティブな自己概念を持っているものです。ポジティブな自己概念を持っていれば、仕草や行動が魅力的になり、積極的に男性へアプローチすることができます。

自己概念とはその人の性格であり、行動に現れます。つまり、自己概念を変えれば性格や行動を変えることができるということです。

●自己概念の成り立ち

生まれついて「私には魅力がない」と思っている人はいません。自己概念は環境や他者の評価から後天的に身に付けたものだからです。親や兄弟から「可愛くない」と言われて育てば「自分には魅力がない」という自己概念を持つことになります。「おまえは運動音痴だ」と言われて育てば「私は運動が苦手だ」という自己概念を持ちます。自己概念に従ってスポーツが嫌いになり、身体を動かすことを拒むことになるのです。

他人の評価は、間違っていることも歪んでいることもあります。しかし、どんなに好ましくない評価であってもその評価を受けたことで、好ましくない自己概念をつくり維持することになるのです。また、人はどんなに好ましくない自己概念であっても、一度形成されると維持し守ろうとする傾向があります。

自己概念と経験の一致・不一致

自己概念と経験との間にズレがある(一致しない)と実現傾向を妨げます。逆に自己概念と経験が一致していると、感情と行動に矛盾がなくあるがままの自分と思い込みの自分(セルフイメージの理想と現実)が一致しているので実現傾向が機能します。来談者中心療法では自己概念が経験と一致した状態を最も望ましいと考えます。

自己概念の不一致自己概念と行動(体験)が一致していない。

例1:自分は正直者だと思い込んでいるが嘘をよくつく

例2:いじめを受けていながら笑顔(ひきつった)を浮かべている

軽い自律神経失調症のケースで通勤・通学時に腹痛や吐き気に必ず襲われるという症状がある。この症状を発症する人は肉体的にも精神的にも自分自身が強い人間だと思っていることが多い。大抵の場合きっかけは些細なことから発症する。

出勤途中でたまたまお腹を下した経験をすると別の日の朝も腹痛を起こさないか警戒する(軽いトラウマ)、この状態で本人は「私は腹痛を起こすような胃腸の弱い人間ではないしそんなことを心配するほど心も弱くない、だから私は平気だ!」と考える。というか、そう思い込もうとしている。それが臆病であることの証明であることに気づいていないのです。こうした不一致は本人が気づかないと広がっていき慢性的な神経症につながることもあります。

自己概念の一致とは、楽しいときに笑い、辛いときには泣けること、思い込みに囚われず客観的に事実を受け入れられることです。その状態が来談者中心療法の目的となる「十分に機能する人間」であり、理想と言えるパーソナリティです。

来談者中心療法はこちら⇒「来談者中心療法の理論とカウンセリング」

modoru
スポンサーリンク