自律訓練法の公式と手順

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自律訓練法とは

自律訓練法は、リラクセーション法を代表する技法で、ドイツの精神科医シュルツ博士が考案した自己催眠を応用したリラックス法です。

ストレスを解消する効果があり、慣れてくると「緊張」「イライラ」「不安」といった心理的ストレスを短時間で効果的に解消できる技法です。

精神科や心療内科では心身症神経症の療法をはじめ、うつや恐怖症など心理治療では全般的に用いられています。自律訓練法は、自律神経の乱れを整えたり疲労回復の効果が期待できるため、特別な問題がなくても健康維持やストレスケアの一環として幅広く用いることができます。

まずは、自律訓練法で得られる代表的な効果です。

自律訓練

自律訓練法の効果

  1. 不安、緊張がもととなる心身症の治療
  2. 疲労回復、肩こりや頭痛の軽減
  3. 集中力が上がり勉強や仕事の効率が上がる
  4. 自己統制が向上し落ち着いた行動がとれる
  5. 不眠や急な緊張の緩和

心の緊張をときほぐすことで得られるプラスの効果は期待以上です。自律訓練は自分1人でおこなえるので、手順を確認して練習してみましょう。

自律訓練の注意点

★消去動作の実施

自律訓練法を始める前に2点注意があります。1つ目は「消去動作を実施する」ことです。

自律訓練法は、催眠を応用したリラクセーション法なので、いわゆる変性意識と言って意識の水準が普段より大きく低下します。

だからと言って、よほど危険性はありませんが、実施した後には「消去法」をしっかりと実施して意識水準を戻しましょう。

ちなみに、お休み前にベットの上で実施するときなどは、消去動作はおこなわずにそのまま寝てしまって大丈夫です。

★特定の疾病がある人は第五と第六公式の利用に気を付ける

そして2点目ですが、特定の疾病をお持ちの方に対する注意点です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍・糖尿病をお持ちの方は、手順の中で説明する「第五公式」をおこなわず避けてください。

また、偏頭痛てんかんのある方は「第六公式」を避けておこないます。それと、心臓に持病のある方は「第三公式」を避けます。

自律訓練は実際に血流を良くしたり、内臓機能を高めたりする効果があるので特定の病気に対してマイナスに働くことがあるからです。

気になる場合は主治医に相談しましょう。

自律訓練をはじめる

ここからは、実際の訓練の説明に入ります。

自律訓練は「1つの背景」「6つの公式」で構成されています。背景となる公式と第一、第二公式が特に重要な公式になっており、第二公式まで体得できれば十分にリラクセーション効果が期待できます。

第三から第六の公式は、出来るに越したことはないのですが、体得するまでに時間がかかるのと、持病がある方は注意が必要になるので無理に頑張る必要はありません。また、第二公式までしっかりと体得すれば、第三から第六までは自然に身に付いていきます。

ちなみに、自律訓練の修得は早い人でも、だいたい2.3ヶ月くらいの練習が必要になるので第二公式までをじっくりと練習しましょう。

実施する場所

自律訓練は椅子に腰かけるかベットなどで横になった姿勢でおこないます。ちょっとした休憩時間や電車の移動中などを利用しても実施することはできますが、特に練習段階では外からの刺激が邪魔になるので、できるだけ静かで落ち着ける場所を探しましょう。

初めのうちは、時間に余裕をもって寝室や休憩室などを利用するといいです。また、朝の目覚めた時や夜の寝る前などは、もともと身体がリラックスしているので感覚をつかみやすくおすすめです。

公式|自律訓練の内容

実際に利用する公式です。

  • 背景公式「気持ちが落ち着いている」・・安静練習
  • 第一公式「両腕、両足が重たい」・・重感練習
  • 第二公式「両腕、両足が温かい」・・温感練習
  • 第三公式「心臓が静かに規則正しく打っている」・・心臓調整練習
  • 第四公式「呼吸が楽だ」・・呼吸調整練習
  • 第五公式「お腹が温かい」・・腹部温感練習
  • 第六公式「額が涼しい」・・額涼感練習

落ち着いていて、両腕と足が重たくて温かい。・・眠りにつく前の身体状態を再現するような感覚です。

【時間】

練習時間はだいたい5分くらい、初めのうちは2~3分です。なんだか短いと思いますが、感覚が身に付くまでは、意識の集中状態を持続するのが大変なので、あまり長時間頑張っても集中が続きません。

訓練を続けていくと身体の感覚を維持したまま数十分と持続できるようになるのですが、30分も持続できるようになれば自律訓練はマスターしています。

消去動作

訓練実施後の「消去動作」の手順

  • 手のひらを握って開く・・4.5回
  • 肘の曲げ伸ばし・・3.4回
  • 背伸びをして深呼吸・・2.3回

注意のところでお伝えしましたが、自律訓練は自己催眠を用いているので一時的に意識水準が低下します、実施後はこの消去動作をおこなって平常に戻します。

お休み前など、そのまま寝てしまえるようなときには消去動作は必要ないですが、車の運転前などに自律訓練をおこなうのは危険があるのでやめましょう。

自律訓練の練習手順

自律訓練

1.安静練習

まず、背景公式の「気持ちが落ち着いている」を心の中でくりかえしつぶやきます。

このときに、頭からつま先まで全身の筋肉からチカラを抜くような感じを意識しておこないましょう。落ち着いているときの呼吸や手足の感覚、体温などを注意深く感じ取るようにします。

また、イメージが得意な人は、心地のいい春の芝生の上にとか、静かな川のほとりなどリラックスできる情景を思い浮かべると効果的です。

★「気持ちが落ち着いている・・気持ちが落ち着いている・・・気持ちが落ち着いている・・・気持ちが落ち着いている・・・・気持ちが落ち着いている・・」

2.重感練習

気持ちの落ち着きを感じられるようになったら、続けて第一公式の重感練習へ進みます。

第一公式の重感練習と、第二公式の温感練習は、利き腕から練習します。「右腕が重たい・・右腕が重たい・・」といった感じです。

右腕の重さを感じられるようになったら反対の腕を意識して「左腕が重たい」とくりかえします。足も同じように片足ずつ重さを広げていき両腕と両足の重さを感じられるように練習します。

また、各公式に集中して背景公式が抜けないように「右腕が重たい・・気持ちが落ち着いている・・右腕が重たい」といったように、どの公式でも背景公式を適度に挟みましょう。

★「気持ちが落ち着いている・・右腕が重たい・・右腕が重たい・・(重さを感じられたら)・・左腕も重たい・・左腕が重たい・・さらに右脚も重たい・・右脚が重たい・・気持ちが落ち着いている・・左脚が重たい・・両腕、両脚が重たい・・」

3.消去動作

消去動作を実施します。※2-3消去動作を参照

公式練習の終わりには消去動作を実施しましょう。

消去動作なしで次の公式へ練習を続けても問題はありません。ただ、個別に消去動作をすることによって、集中が維持され身体感覚がつかみやすくなるのと、段階的に消去とリラックスを繰り返すことで緊張状態とリラックス状態を自分でコントロールする感覚が身につくという二重のメリットがあるので消去動作も丁寧におこないましょう。

4.温感練習

第二公式の温感練習です。

第一公式で両腕と両足の重さを感じられるようになったら、続いて第二公式へ進めていきます。基本的な手順は第一公式と同じです。

第二公式以降の練習では背景から第一、第二と順番にセットで進めます。

★「気持ちが落ち着いている・・両腕両脚が重たい・・両腕両脚が心地よく重たい・・右腕が温かい・・右腕が温かい・~・両腕が温かい・・両脚が温かい・・気持ちが落ち着いている・・両腕両足が温かい・・(繰り返し)」

5.第三公式以降の練習

第三公式以降は、第一や第二公式と同じように進めていただければ大丈夫です。焦らずゆっくりと体得していってください。

ちなみに、公式に用いる言葉は自分に馴染みやすい言葉にアレンジしても大丈夫です。例えば「首、肩、腰のチカラが抜けて気持ちがとても落ち着いている」とか「右腕が心地よくズシーと重い」といった感じです。

だんだん慣れてくると自己暗示が上達して片腕でも難しかった練習が両腕と両足、重感と温感が同時にできるようになります。

そして、そこまで上達すれば、心身の緊張と弛緩(リラックス)をある程度セルフコントロールできるようになっているということです。

緊張と弛緩のコントロールと言うのは、通常では意識できないためにストレスなどによって乱れてしまう自律神経系のバランスを、体感的に整えてコントロールするような感覚です。

自律訓練法については以上です。まずは第二公式までの体得を目標に、ぜひ普段の生活に取り入れてくださいね。自律訓練をマスターしてストレスを溜めない生活をおくりましょう。

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